・英語が使えるようになるか否かに、「頭の良さ」は(あまり)関係がない。
・言語は「習慣」。実際にその「知識を使う」機会を、日常的に持てるかどうかが重要。
・「話す」「聞く」「読む」「書く」のうち、「読む」ことが一番学習の効率が良い。
・英単語、英文法の学習と”並行して”、英文を読むこと。英文を読む中で、実際に英単語や英文法の「知識を使う」ことで、理解と記憶の定着が進む。
*教材は、このページの後半あたりを参照。
「英語が苦手」という生徒は、「英語ができない」から「苦手」であると考えられますが、英語を使える(運用できる)かどうかというのは、「頭が良いか否か」とはあまり関係がありません。
まず、(道ですれ違う程度の人を含めた)あなたの周りに存在する人々について考えてみてください。
頭の良し悪しに関わらず、ある程度のレベルまでは、皆が日本語を使えていますよね?
そうでなければ、意思の疎通さえ困難になってしまいますが、実際は、ある程度以上、「日本語を使って」他人と意思の疎通がはかれていますよね?
これは、英語でも同じです。
英語圏(例えば、イギリスやアメリカ)において、その国で生まれ育った人は皆、(基本的には)他人と英語を使った意思の疎通を行えています。そこでは、頭の良し悪しは関係ありません。
さて。
あなたが今、日本語を使えているのはなぜでしょうか?
英語圏で生まれ育った人が、英語を使えているのはなぜでしょうか?
「その言語が使われる環境にいたから」という応えは正確ではありません。
その言語が使われる環境で「自分もその言語を使ってきたから」、その言語が使えるようになったのです。
ただその言語が使われる環境にいるだけで、会話にも思考にもその言語を使わないのであれば、身に付くわけがないということは、想像がつくでしょう。
それはもはや意味のない、ただの雑音でしかありません。
つまり、言語の習得とは、能力の問題ではなく、「習慣」の問題なのです。
現に、「あなたは英語を話せますか?」と英語で訊く場合には、”Can you speak English?” という訊き方は普通しません。”Do you speak English?” と訊くのです。
より分かりやすくするために言語以外の例を挙げてみましょう。
例えば、サッカーや野球に興味がない人は、それらのルールもよく分からないはずです。
しかし、サッカーや野球を実際にやり始めたり、観戦をするようになれば、ルールの大半は自然と覚えていきます。覚えようと思わなくても、いつの間にか覚えているはずです。
これは、実際のプレイや、試合の観戦を通じてそのルールを理解し、その知識を自分の頭の中で繰り返し使っていくために起こります。
同様のことは何のスポーツ、何のゲームに対しても言えますが、言語の場合でも同じなのです。
言語も、決まったルールに従って運用されているのですから、その点はスポーツやゲームと変わりありません(決まったルールがなければ、意思の疎通などできませんからね)。
つまり、英語ができない生徒は、習慣的にその「知識を使う」機会がないために、英語ができるようにならないのです。
そして、英語を使えるようになりたければ、日常的に英語を使うしかないのです。
そう言われても……と思う人も多いかもしれませんが、例えば、数学でも同じことが言えるのですよ?
数学が出来るようになるためには、公式なり解法なりの知識を、実際に自分で問題演習などを通じて使っていく必要があります。
公式や解法だけ覚えても、それだけではほとんどの問題は解けませんし、すぐに忘れてしまいます。その「知識を実際に使う」ことが重要なのです。
英語にだけ、何か特別な要素がある、というわけではないのです。
ルールに従ってなされるものは全て、「知識を実際に使う」経験が重要ということなのです。
さて。では、実際にどう学習をすればいいのか。
まず、英語の知識を使う場面というのは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つに大きく分けられますが、このうち、日常的に取り組むことが容易で、且つ知識を定着させやすいのは「読む」ことです。
「話す」「書く」場合、いずれも「相手」がいなくてもできますが、相手がいないと(学習がかなり進むまでは)あまり意味がありません。
自分が話した英文、書いた英文が正しいかどうか、正しくなければどこがどうおかしいのか、どうすれば良いのか、それを指摘してくれる相手がいなければ、学習の効率が非常に悪いということは、容易に想像できるでしょう。
「聞く」場合は、録音データなどを使えば相手がいなくても可能ですが、少なくとも学習初期の段階には向いていません。
それは、「分からない箇所があっても、それを文字の形で把握できないために調べようがない」、「自分に必要な情報を付け足せない」という事情があるため。
また、ある程度、英単語や英文法が身に付いていなければ、聞こえてくる音声はただの「理解不能な音」にすぎず、それでは学習に使いようがありません。
「読む」場合には、自分の都合で、自分の好きなタイミングで行えます。
そして、同じ箇所を繰り返すことも、途中で必要な知識を調べることも、途中で止めることもできます。黙読するのも、音読するのも自由です。自分にとって必要な情報を英文に書き加えることも可能です。
また、一度読んだ英文は、次に読む際には、より短い時間で読めるようになります。そして、その次に読む際には、さらに短い時間で読めるようになります。
そのため、英文の中で使われている英単語や英文法について、より短い時間でその「知識を使う」(確認する)ことが可能になっていくのです。
自分で、自分に必要なものを、必要なだけ、好きな時に取り組める。
そして、英文を読んでいく中で、実際に英単語や英文法の「知識を使う」ことで、それらの理解が深まると共に、記憶に定着していく。
「読む」という学習方法は、非常に効率が良い方法だということを、ご理解いただけたでしょうか?
ただ、「読む」ことを中心に英語の学習を進めようにも、「英語が苦手」な状態で、いきなり英語の書籍やニュースを読めるはずがありません。
単語知識も、文法知識も、英文の読み方についての知識も、何もかも足りないからですね。
しかし、「必要な知識を完全に身に付けてから英文を読む」というのでは、いつまで経っても英語はできるようになりません。
実際にその「知識を使う」機会がなければ、その知識は身に付かないことは繰り返し述べてきたことですよね?
では、どうすればいいか。
英語が苦手な生徒は、まず、中学英語レベルの英単語、英文法を学習”しながら”、中学英語レベルの英文を読んでいきましょう。
英単語、英文法を学習してから英文を読むのではありせん。並行して英文を読んで生き、学習した知識を英文の中で使っていくのです。
その際に使う教材は、英単語帳は『中学 まとめ上手 英単語』、英文法は『くもんの中学英文法―中学1‾3年 基礎から受験まで』を。
そして英文集は、『中学版 速読英単語 高校入試突破のための必須1300語』と『実戦!英語長文はこう読む!!―高校入試』をお薦めします。
(繰り返しになりますが)英単語も英文法も、単語帳や問題集に取り組んだ時点で完璧に押さえようとする必要はありません。
それだと時間がかかってしまいますし、実際に英文の中でそれらの「知識を使う」ことしなければ、どうせすぐに忘れてしまいます。
大体を押さえたら良しとし、あとは英文を読む中で確認していきましょう。
そして、英単語、英文法の学習を進めながら『中学版 速読英単語』と『実戦!英語長文はこう読む!!―高校入試』を何周か読んでいきます。
どちらの英文も「一回読んで終わり」にはしないでください。繰り返し読むことで、短い時間で英語の「知識を使う」ことが可能になり、それこそが、英語を身に付けるための重要なポイントなのです。
なお、『中学版 速読英単語』は英単語と英文法の「知識を使う」ために使うのですが、『実戦!英語長文はこう読む!!―高校入試』は主に、英文の「読み方」を理解するために使います。
英語は日本語とは違う言語なので、当然、英語の(つまり日本語とは違う)読み方をすることが必要です。これができないと、英文が複雑になるに連れて対応ができなくなってしまいますが、多くの「英語が苦手」な生徒は、そのような状況に陥っていると思われます。
英語は日本語話者のために作られた言語ではないのですから、日本語の理解の仕方で英語を理解していこうというのは、「無謀」に他なりません。
(英文の読み方については、「英文理解のコツ」のページも参照)
というわけで、『中学版 速読英単語』だけでなく、必ず『実戦!英語長文はこう読む!!―高校入試』も使ってほしいのですが、この2冊を問題なく読めるようになったら、次は高校英語レベルの教材で、同じように学習を進めていきます。
英単語帳、英文法の問題集などは、学校で使っているものもあるでしょうし、それを使えばいいかと思うので、英文集だけ用意しましょう。
私のお薦めは、『速読英単語 入門編』→『速読英単語 必修編』→『話題別英単語 リンガメタリカ』の順に取り組むこと。
多くの生徒は、『速読英単語 必修編』の英文が問題なく読めるようになれば、それで十分だと思います。
しかし、中には受験の際に英語でかなりの点数を取らなければならない生徒もいるでしょうから、その場合には、『話題別英単語 リンガメタリカ』へと進んでください。
また、ネイティブの子ども向けに書かれた英文も、飽きずに英文を読む経験を積む助けになるでしょう。
その場合には、TIMES of Kids のサイトの英文がお薦め。詳しくは、「お薦めの教材など/ウェブサイト」のページを参照してください。
17/08/23 : ページ作成