ここでは、いわゆる「知育玩具」の 中から、私が実際にやってみてお薦めできるものを挙げていきます。
ただ、今のところは大人も遊べるものにしかあたっていないので、対象年齢は若干高め(小学校中学年程度~)となっている点は、あらかじめご了承ください。
さて、「読書はさせるべきか」のページでも述べましたが、ある程度以上に文化的なものというのは、子どもが全くの自力で接触することはかなり難しいものです。
いわゆる知育玩具も、大半のものはこれに当てはまります。
そのため、保護者の方には、積極的に子どもに取り組ませてほしいのです。
知育玩具というのは文字通り、 「知育」に役立つものですが、知育玩具は基本的に複数人で使うものであるため、親子間、子ども間(友人間)のコミュニケーションツールとしても活躍します。人が生きていく上で不可欠であるコミュニケーション能力の獲得・向上のためにも、知育玩具を利用してください。
また、これはあまり言われていないこと かもしれませんが、親子間での知育玩具での遊戯を通じて、思考、論理の組み立て方や状況認識の方法などを自然に子どもに伝え、それを習得させることが容易である点も、知育玩具の優れた点です。
このような内容を子どもに伝えられる別の方法というのは少ないでしょうし、それに子どもが耳を傾け理解することができるケースというのはさらに少ないと思われます。
しかし、世代間でのそのような文化的なノウハウの継承がなされなければ、世代更新をする理由には動物的 (生物学的)なものしかなくなってしまいます。私は特にこの点から、知育玩具の利用を薦めます。
・ワードバスケット
まず私がオススメするのは、メビウスゲームズの『ワードバスケット』。ごく簡単に言えば、カードを使った「しりとり」のゲームです。
このゲームのよい点は、やはり言語能力の向上に寄与する点にあります。
「読書はさせるべきか」のページなどでも述べましたが、人は言語によって認知・思考をする存在である以上、言語能力の差が知能の大きな差となります。
そのため、早い時期から言語能力の向上に努めるべきなのですが、このゲームによって、その言語能力のうち、特に語彙能力(語彙知識の獲得、参照能力)を楽しみながら伸ばすことが期待できます。
これは、人が使う単語も多く耳にすることになるためであり、また、通常のしりとりとは違い、自分が出した言葉の最後の文字から始まる単語を(手持ちのカードから)作れる限り、自分が続けることも可能であり、(それが出来れば勝利する可能性も高まるため、)組み合わせを構築するために自身の脳内の言語辞書を素早く参照する必要性があるためでもあります。
さらに、手持ちのカードをいち早く全て使いきった者が勝者となるルールであることから、思考、判断、状況認識のスピードなどを育てることにも繋がります。
また、親子間でやる場合などには、子どもの語彙能力の発達程度を知るツールにもなりますし、親の語彙知識を子どもに伝える場にもなります。子どが作る単語から、子どもの興味対象などを知る機会にもなり得るでしょう。
このように、このゲームには様々なことが期待できます。
ルールも簡単で、小学校中学年程度であれば、理解できないということはまずないと思います。
小学校低学年のお子さんについては、特殊なカードの意味合いを理解できないかもしれないので、それを取り除いて使えば、おそらくは大丈夫かとは思いますが、ご家庭内とご親族等に小さなお子さんしかいない場合には、低年齢向けの『ワードバスケットキッズ』の方を選んだ方がいいかもしれません。
ただ、お子さんの成長や一緒に遊ぶ面子の年齢の幅などにも対応できるので、基本的には、『ワードバスケット』の方を薦めます。
・アルゴ(algo)
次にオススメするのは、学研の『アルゴ』。ごく簡単に言えば、「手札の数字を当てあうゲーム」の一種になります。
その手のゲームと同様に、自分の手札と既に明らかになっているカードから相手の手札を判断するのですが、他のゲーム(『ファブフィブ』など)と違い、運の要素が少なく、論理的思考能力の向上に大きく寄与する点で、この『アルゴ』は優れています。
それでいて、ゲーム自体のルールは簡単で、プレイ時間もさほどかからず、気軽にできる点もよいでしょう。
また、このゲームでは、プレイを重ねていく内に、自然に子どもが(自力で)論理的な思考の過程を踏み、論理的思考能力を向上させていくことが期待できますが、それだけでなく、親子間で行う中で、保護者の方が子どもに「思考の過程」を伝えることができることも大きな魅力です。
お子さんが数字を当てられなかった理由と、どのような思考過程を踏むべきだったかを、そして、保護者の方が数字を当てられた理由を教えてあげることで、その後、子どもの論理思考的能力が急速に伸びていくことが期待できます。
また、その中でお子さんは、世の中には方法論が存在し、それを理解し、運用することが重要であると気付く機会を得られるかもしれません。もしそこまでいけば、お子さんの将来はそれだけで比較的明るいものとなるでしょう。
私がこれまで指導してきた生徒(特に中学生)によく見られ、その度にガッカリすることを通り越して絶望することに、論理的な思考(「こうだから、こうなる」)を一切踏むことなく、ただ「こうであったらいいな」という願望に沿って、しかも自身では思考したつもりになって発言や解答をする(「こうだと「思ったから」[=勝手に思っているだけ=勝手に信じているだけ])、ということがあります。
このような性向を持つ生徒は、まず成績が伸びないので、それを矯正することにしばらくは時間を割かれるわけですが、それは学習塾などの役割では本来ないはずです。
しかも、このような性向の危険性を認識し、それを強制しようと考えられる講師ばかりでもありませんし、生徒の知能程度によっては、1週間に1回の授業程度では矯正できない場合もあります。ただ塾に通わせれば問題ないと考えるのは、思慮不足としか言いようがありません。
早め早めに、少なくとも言語能力と論理的思考能力はお子さんに身に付けさせるようご家庭で努力することを「強く」お薦めします。
・どうぶつしょうぎ
次にお薦めするのは、幻冬舎エデュケーションの『どうぶつしょうぎ』。ごく簡単に言えば、「将棋を3×3マスに縮めたゲーム」です。
「読書はさせるべきか」のページや、この「知育玩具」のページでも述べたことですが、ある程度以上に文化的なことを子どもが始めるためには、保護者の方の導きが必要です。
将棋や囲碁、チェスなども当然、この「ある程度以上に文化的なこと」に入ります。
将棋や囲碁、チェスなどは、単純に「出来ないより出来た方がいい」ことは間違いないですし、それらが出来ること、そしてそれらをやることによって得られるものがあることも、想像に難くないでしょう。
であるならば、積極的に子どもに触れさせてほしいわけですが、特にお子さんが小さいうちは、いきなりそれらに取り組ませるのは難しいでしょうし、そうでなくてもハードルが高いと感じることも多いかと思います。
そのような場合に役立つのが、この『どうぶつしょうぎ』です。
まず駒の種類が少なく、ルール自体が簡単になっていること、そして、駒の種類と数、マス目が少ないことで、考えなければならない要素が減っていることから、かなり敷居が低くなっています。デザインもかわいいので、その点からも、取り組みやすくなっていると思われます。
また、たとえ将棋やチェスなどにお子さんの興味が発展しなかったとしても、このゲームから得られるものは大きいと思います。
このゲームも将棋の要素を持っているので、将棋などで必要とされる、現状を理解する能力、それを踏まえ先の展開を見通す能力、その上で最善の行動を選択する能力、などといったものを身に付けることができます。
このような能力も一言にすれば「論理的思考能力」なのでしょうが、『アルゴ』の場合に必要とされ、身に付けることのできるものとはまた違うことが分かるでしょうか。やはり、将棋のようなものを通じてこそ獲得できる能力というものもあるのだと思います。
なお、少なくとも最初のうちは親子間で、保護者の方が子どもに色々教えながらプレイすると思いますが、将棋やチェスを「簡単にした」ものと考えていると、意外と保護者の方の方が苦戦すると思います。
確かにルール自体は将棋やチェスとあまり変わらないのですが、駒とマスの数がかなり減っていることで、中・長期的な戦略が組めず、短期的な手を読み切って打つ必要があるのです。これを読み切れないと、ルールを理解し、経験を積んだ状態になったお子さんに追い込まれる場合もあるかもしれません。
ただ、それもこのゲームの魅力だと私は思います。やはり、親子共に成長していく方が、子どものやる気に繋がりますし、家族の仲も深まるのではないでしょうか。
なお、将棋や囲碁にお子さんの興味が発展する場合には、くもんやビバリーから出ている駒の動かし方や配置が駒や盤面自体に記載されていたり、石の置ける場所が分かるような仕組みの入っている、初心者用のものを使ってもいいかもしれません。
チェスであれば、どうぶつしょうぎをやった後なら、ルール自体が分からない可能性は低いと思いますが、将棋や囲碁(特に囲碁)ですと、普通の道具を使って始めると、やはり細かいルールなどが分かり辛いでしょう。
また、そのような初心者向けのものを選ぶと、保護者の方がそれまでに将棋や囲碁をやったことがない場合に、一緒に取り組むことができるのもよいですね。