ある静岡県東部の塾講師のページ

作文問題(国語)のコツ

 これまでの担当生徒を見る限り、国語の作文問題については、苦手意識は持っていないが実際には点が取れていないという生徒が多いように思える。

 これはおそらく、日本語で書くべき内容が指示され、それを日本語で考え、そして答えるという問題の性質から根拠のない自信が生じ、問題の解き方を考え、身に着けたり、実際に練習したりするに至りにくいことが主な原因だろう。
 また、学校の授業では(文章一般の書き方を含め)作文問題へのアプローチについて教えることがほぼなく、生徒にそれを考えさせる機会がないことも当然ながら、原因の一つと考えられる。

 言葉遣いや段落構成などの点については、参考書などを見れば必要なことは一通り書かれているだろうから、それを意識しながら練習すれば比較的短期間で押さえることができるはずだ。
 だが、それだけでは、多くの生徒は作文問題を十分に「回答」できるようにはならないだろう。というのも、作文問題で得点できない生徒というのは、作文問題を解くにあたっての意識の段階で間違っている(とまでは言わなくても、非常に非効率的な)場合が多いからである。

 

 作文問題を解くにあたって一番重要なことは、「書きたいことを書くのではなく、書けることを書く」ということに尽きる。
 実際に国語の作文問題を生徒に解かせてみると、ほとんどの生徒は、問題の指示を読みそこから自分が書きたいと思った(思いついた)内容をすぐに書き出すが、これが作文問題で得点できない一番大きな要因なのである。

 

 よく理解してほしいが、作文問題というのは、思考や思想の素晴らしさで点が決まるわけではない書かれたものがきちんと(求められている内容・形式を満たした)文章として成り立っているか否かで点が決まるのである。
 そもそも、採点する側は、思考や思想の素晴らしさという主観的で曖昧な要素から点数を具体的に決められるはずがない。 それは単純に困難(というより厳密には不可能)という理由からだけでなく、そんなことをしたら、教師や学校が特定の主義・思想を生徒に押しつけることになるという、教師や学校、そして教育制度自体の持つ事情にもよるものである。
 よって、素晴らしい(と自分で思い込んでいるだけの)意見を書くのではなく、出来のよい文章を書くことが重要になる。

 

 さて、「書きたいことを書く」というスタイルで作文問題を解くと生じる具体的な問題点は、一つの文章として、論理関係が十分に成立していない文になる場合が多くなるということだ。

 これは、書きたい内容が先行し、その後の論理展開やその内容を支える要素の有無を考慮せずに文を書く、つまり見切り発車で書き出すことで、帳尻が合わなくなるために生じるものだ。
 だが、ただ書きたいことだけを書いて、まともに文章として成り立っていないものなど、何の価値もない。言いたいことを言うだけなら、小学生でも出来るのである。だから、少なくとも、書きたいことを書くのであれば、その後の論理展開や、加えていく具体的な意見まで考えて書き出さなければならない。

 

 また、書きたいことから文章を作るという行為は、非常に非効率的で危険である。
 なぜなら、それは方向性が既に決まった状態で文章を考えるということであるから、採ることのできる選択肢の幅をかなり狭めることになる。その少ない選択肢を無事見つけ出せればいいが、それに時間がかかり過ぎれば結局、試験においては回答できないし、何より思いつかなかった場合のリスクが大きすぎる。それならば、書けることを書いた方がよいはずだ。

 

 さて、「書けることを書く」ということが具体的に意味するところは、問題で指示されている内容について、何パターンかの考え方・答え方(論理展開)を考え、その中から、一番文として上手く成り立つものを選ぶということだ。選択肢の幅が広い状態から書くものを選ぶのである。

 そうするだけで、帳尻合わせに失敗するような可能性はかなり低くなり、そして、まともな文章を書ける可能性がぐっと高まる。
 
また、内容がほぼ決まった状態で書き出すため、書いては消て、書いては消してという、「書きたいことを書く」スタイルを採る際に生じる時間のロスもかなり減るだろう。

 

 

 なお、以上のことは、英作文にもほぼ共通する内容である。
 一番最初に思いついたこと(自分が書きたいと思うこと)を書くのではなく、問題で指示されている内容から逸脱しない範囲で書ける英文を考えて書くことが重要だ。

 

 また、これは日常生活においても必要なスタイルでもある

 世の中には自分が言いたいことを大声で言っているだけの人物というのが多くおり、彼らの多くはその主義・思想を支えるだけの根拠にまで考えが至らない
 そのため、自分の主義・思想の内容については一切疑問を抱かず、その主義・主張こそが唯一正しく、それにそぐわないものは全て間違っていると考えるのだろう。

 そういった人物がいかに社会、人類にとって害悪となっているか。彼らの姿はニュースなどで、そして街中でも日常的に目にするだろうから、彼らのことを見て、よく考えてみてほしい。

 そして、「書きたいことを書く」のではなく、「書けることを書く」というスタイルを作文問題に対して用いることで、言いたいことを言っているだけの人物に将来ならないように成長していってもらいたい。



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